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こんにちは。なべおです!
今回はおすすめ本紹介ということで隠岐さや香氏の『文系と理系はなぜ分かれたのか』を紹介したいと思います。
文系理系の区分は進路選択の場などにおいて非常に身近な区分だと思います。
私は文系だから数字に弱い、理系だから本を読むのが苦手など日常会話でも文系理系の区分はしばしば登場すると思います。
しかしそもそも文系理系の区分の起源はどこにあるのでしょうか?
本書はタイトルにもあるように「文系と理系はなぜ分かれたのか?」について徹底分析されている1冊です!
本記事ではそんな『文系と理系はなぜ分かれたのか』の感想・要約を書いています。
ぜひ最後まで読んでみてください!
目次
文系と理系はなぜ分かれたのかの要約
まず最初に『文系と理系はなぜ分かれたのか』の要約を簡単にしていきたいと思います。
全部で5章あるので、章ごとに以下解説していきたいと思います。
第1章 文系と理系はいつどのように分かれたか? --欧米諸国の場合
この章では文系と理系はいつどのようにわかれたのかについて欧米諸国の歴史が書かれています。
もともとヨーロッパ諸国では宗教と学問が密接にかかわっていました。
その中で16~18世紀にかけて学問と宗教が分離し、純粋に学問的真理を追究していく動きが起き始めます。
その一環として人間の主観を排除し、自然をありのままに直視し真理を追究しようとする学問区分と、人間をあくまで基準として物を見ようとする学問区分の2つに分岐します。
これが文系と理系の分離の始まりとされています。
その後20世紀後半になるとSTEM教育(科学・技術・工学・数学)と人文社会科学の2つに分ける風潮が主流になっていきます。
これが今の文系と理系の二分法の直接の理由になっているというわけです。
第2章 日本の近代化と文系・理系
この章では日本の近代化と文系・理系についての議論が書かれています。
日本の近代化は明治時代からと一般的にはされていますが、明治時代の日本は欧米の「専門分化」した学問を取り入れました。
技官と文官を分ける制度が根付いていたこともあり、文理の区分が顕著に現れました。
そして大正時代以降になると理系が特に優遇されました。
第二次世界大戦中の学徒出陣でも文科系の学生が出陣することになります。
このように欧米での文系理系の区分は日本でも比較的スムーズに受け入れられていったわけです。
第3章 産業界と文系・理系
この章では文系理系の区分と産業界との関係について論じられています。
その中でも大学生が特に気になるであろう就活について多く語られています。
文系と理系で就活に有利不利はあるのでしょうか?
文系理系それぞれについて簡単に解説していきます。
まず文系です。
文系では大学で培った知識などは直接は就活にはあまり影響しないとされています。
それよりも大学やそれ以前での勉強で培った論理的思考力や教養などが就活では主に見られていると書かれています。
大学で学んだ経済学や文学の知識よりも、もっと実際の仕事で役立つような実用的な力が求められているというわけです。
一方理系については文系よりも専門的な地理気が重視されているとされています。
では博士課程まで行った方が就職しやすいのでしょうか?
実をいうと必ずしもそういうわけではありません。
博士号ほどの知識を企業側は求めているのではなく、学部や修士レベルの知識で十分というわけです。
今後の傾向は変わるかもしれませんが、理系の場合は過度に専門的な知識は必要とされない場合もあることを認識しておきましょう!
第4章 ジェンダーと文系・理系
この章ではジェンダーと文系・理系について語られています。
女性で理系を志望している人は少ないなど、ジェンダーと文系理系は少なからず関係があるように思います。
しかし女性は理系は向いていないなどといったものは本当なのでしょうか?
結論から言うとこれに関しては筆者は否定的な見解を示しています。
もともと学問における性差はあまりないとされています。
無意識のうちに刷り込まれたステレオタイプや思い込みが女性の理系進学を避けているだけで、実際には向き不向きはあまりされていないと筆者は主張しています。
第5章 研究の「学際化」と文系・理系
この章では研究の「学際化」と文系・理系について語られています。
そもそも「学際化」とは何でしょうか?
これは国際化の学問バージョンなのですが、脳科学や環境学などをはじめ、文系理系を問わず学ぶような学問が増えつつあることを指します。
実際環境問題を考える際には、倫理学や経済学、数学など多くの学問がかかわるような問題となりつつあります。
筆者はこれと対置するものとして「タコツボ化」という表現を用いていますが、タコツボ化を避け、研究を学際化することが肝要だと説いています。
そして筆者は最終的には文系と理系は一つに収れんされるのではないかという見解を示しています。
近年リベラルアーツ教育が普及しつつある中で、文系理系の区分をなくそうという動きは強まっています。
また海外の大学などでも文系理系の区別なく授業をしているところが数多くあります。
今後の日本の教育制度の動きに注目したいと思います。
文系と理系はなぜ分かれたのかの感想
続いては『文系と理系はなぜ分かれたのか』の感想を書いていきます。
ここでは大きく2つの内容について書いていこうと思います。
文系理系の偏見を減らすことは必要
本書の議論の一つの方向性として文系理系の偏見を減らすことは必要としていることがうかがえます。
例えば理系の方がもうかりやすいなどといったのもその一つです。
そして社会に出ると文系理系の区分は猛威を振るっているように思います。
理系だから数字系は得意なはずだ、文系だから文章読解能力は高いはずだなどといった偏見を無意識のうちにでも抱いてしまうのはよくあることのように思います。
しかしこういった偏見を持つことで、本人の可能性を狭めてしまう可能性もあります。
文系理系の偏見を減らすことはやはり必要だと私個人も思います。
文系理系の論争自体はよいこと
私自身は文系理系の二分法はともかくとして、その論争自体は良いものではないかと感じています。
確かに文系理系というレッテルを貼った状態で、日々を過ごすのはよくありません。
文系だから数字に弱い・理系だから国語ができないというのはあくまで思い込みにしかすぎません。
しかし、文系理系という区分を設けることによって物事が簡単になるのもまた事実です。
例えば受験の際には文理選択を決めておくことで、今後の勉強の方針が立てやすくなるのは事実です。
この二分法が正しいものなのかどうかは正直何とも言えませんが、議論自体があるのは良いことのように思います。
文系と理系はなぜ分かれたのかのレビュー
ここからは実際に本書を読んだ方のレビューを紹介したいと思います。
ぜひ参考にしてみてください!
歴史的背景が紐解かれとても興味深く読みました。参考文献や引用資料が詳細に記載されていて素晴らしかったです。リベラル·アーツの重要性を再認識し、学問が発展してきた歴史のなかで権力者におもねない生き方の大切さも理解しました。著者の研究の発展を祈っています。
Amazonのレビューから引用
「はじめに」にあるように自分も「海外には日本のような文系・理系の区分はない」というようなことをよく聞いた気がしますが、実際には自然科学・社会科学・人文科学のように日本の文系・理系のような区分があって、似たような状況なのだなと思いました。
Amazonのレビューから引用
第3章と第4章の内容が第1章と第2章に比べて薄く感じました。歴史や経緯は述べやすく、現在の状況は推測や著者自身の考えがメインになるからでしょうか。
本記事の内容が少しでも皆さんのためになったということであれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました!